平城宮跡の見学と長屋王邸宅跡の木簡
         綾部の文化財を守る会会長 村上高一氏 

 綾部市文化協会主催の今年度の視察旅行として、奈良平城宮跡を見学されることになり、私もお誘いを受けて去る6月10日に参加致しました。バス1台で行き、参加者は23名でした。当日は稀にみる絶好の天気に恵まれて、8時過ぎに綾部を出発、予定どおりに11時少し前に奈良の西ノ京に到着。遷都1300年記念での観光客の多さを確認しながら薬師寺の塔を遠望,唐招提寺金堂を横に見て、先ず「墨の資料館」を見学しました。

 

長屋王の大邸宅跡を示すガイドさん
左上の赤い線で囲まれたのが平城宮
升目の全体が平城京です
 

 その後、少し早い昼食をいただいて、午後1時に唐招提寺駐車場を出発して平城宮跡のメイン会場へ行きました。時間的にはかなり余裕があって、エントランス広場に2時10分に集合、そこで2時半より1時間半コースの団体見学の説明を受けました。私達23名のこの団体には、2名のボランテアガイドがつき、私達各個人にイヤホンがわたされ装着して、ガイドの声が良く聞こえて、その後の話を安心して聞けるようになりました。更に諸注意の後、本会場に入りました。先ず「遣唐使船復原展示」(全長30メートル、幅10メートル、帆柱15メートル)を見て,当時の先進国・唐との交流について聞きました。次に朱雀門のある広場へ行きました。同門は平城宮の正門で、外国の使節の送迎や、新年に天皇が門を出られお祝いをされたこともありました。門の柱は非常に太く、表面は人の手による削り方になっています。門の左右には高さ5メートル余の築地がめぐり、東西1.3キロ、南北1キロの宮城を囲んでいました。宮城内は皇居をはじめ多くの役所、庭園が造られていて、現在のように草地は多くなかったようです。

 

 
 朱雀門

現在宮城内を約50センチ程掘れば木簡をはじめ驚くほどの埋蔵物が出るとのことです。

 さて、ガイドさんの案内で北へ向い、第一次大極殿とその南の南門広場へ移動しました。大極殿は朱雀門の真北800メートルに堂々と聳える平城宮最大の宮殿です。直径70センチの朱色の柱を44本使っています。但し、朱雀門の柱より少し細いとのことです。当時は天皇の即位式や外国使節の面会など国の最も重要な儀式に使われていたとのことです。

 2001(平成12)年に着工され、今年に復元しました。天平時代には宮城内で貴族の往来があったと思いますが、現在、南門広場では「天平衣装貸出所」があり、その衣装をまとって大極殿を散策できるようになっています。


 
 第一次大極殿

このように立派な宮城・宮殿建設の背景には、大きな負担に苦しむ民衆の生活がありました。彼等の中にはその負担に堪えかねて、現住所から逃亡するものが絶えなかったようです。ここでガイドの説明は終了。イヤホンを返却して大極殿に入り、大きさに驚きながら一巡しました。 

それから出発地点にもどりましたが、よく歩いたこともあって、かなり疲れました。やがて午後4時半に当地を出発して帰途につき、予定どうり午後7時過ぎ綾部に着きました。

さて、今研修中に四方事務局長から、平城宮のすぐ東南に長屋王の大邸宅跡地があり(現在イトーヨーカドウ)、そこから数万点に及ぶ木簡が発見され、重要な史料となっているが、その中の一つに綾部「高津の里」の産物が、当邸に運ばれたという話を聞きました。


 
木簡を削って再利用したので官吏を
「刀筆の吏:とうひつのり」と呼んだ
 
 
綾部の高津
里の木簡
 

そこで、後日私は綾部市資料館へ行き、近澤豊明館長にお会いしてそのことを確かめさせていただきました。館長からは「郷土の歴史、高津発の荷札」(平成14年7月、近澤豊明氏記)という資料を頂戴しました。その一部を紹介させて頂きますと、木簡は長さ28センチ余り、幅2.7センチ、厚さ4ミリ、板の上下両端に切込みがあり、荷札として紐などを留め易くなっています。文字の一部を意訳しますと、「丹波国何鹿(いかるが)高津の里より、?(せき)が贄(にえ)として一斗五升運ばれてきた」ということです。?(せき)とは小さな肉片を固く干し固めたものですが、魚の干物もはいるとのことです。贄(にえ)とは天皇に納める山野河面の珍味のことで、律令に規定はないが、木簡の発見につれて税の一種となっていたようです。これらの物資は、現地高津の人の負担でこれも税として運ばれてきたようです。

 尚、長屋王について少し記しますと、この人物は天武天皇の孫で、皇室の血筋が良くて早くから中央政界で信頼が厚く、主導的な地位(左大臣)を占めていましたが、729(神亀6)年2月、藤原氏の陰謀によって失脚(自殺)させられたといわれています。時に46歳で誠にあっけない幕切れであったといわれています。(長屋王の変と呼ぶ。)今回はこれで報告を終わります。

見学中は一人一人にイヤホンをつけて頂いて大変ありがたく思いました。最後になりましたが、当日お世話下さった文化協会の役員の方々に厚くお礼申し上げます。